いわき自転車文化発信・交流拠点「ノレル?」(常磐上湯長谷町・いわきFCパーク内)は、自転車で走りながら市内の多彩な郷土史に触れる取り組みとして、「『いわき時空散走』プロジェクト」を立ち上げた。23日にはプロジェクトの一環として、まちあるきに向けた地図を作成するため、いわき市南部の植田、佐糠、金山地区を対象とした初のツアーを開催した。
いわき時空散走は、「時空を超えた地域の物語を紡ぎながら、自転車で走っていきたい」がコンセプトで、地元住民とともに、まちあるきができるツアーマップを作成していく。
ノレル?コーディネーターで、いわき時空散走事務局の寺澤亜彩加さん(27)は「車社会のいわき市で、いかに自転車を普及させるかを考える中で、ゆったりと地域づくりに必要な要素を感じてほしい」と趣旨を語る。
今春からリサーチを重ねており、ツアーマップの青写真を描いた上で、来年3月までに植田、佐糠、金山地区に加え、四倉の大野、玉山地区、小川郷駅周辺の地図を完成させる。単なるまちあるきにとどまらず、地域の声を丹念に拾い上げ、歴史の裏側や知られざる小話にも光を当てる。
企画にあたっては、観光家、コモンズ・デザイナーの陸奥賢さん(45)がプロデューサーを務めている。陸奥さんは大阪市でまちあるきの事業「大阪あそ歩」を手がけ、観光庁長官表彰を受賞するなどの実績を持つ。
陸奥さんは「いわき市は14市町村が合併した自治体として、百花繚乱の魅力を持っていると感じている。地域のさまざまなプレーヤーと連携し、土地ごとのアイデンティティーを掘り起こしたい」と強調する。ツアーマップはJR常磐線、磐越東線の市内14駅を起点とした地図に続き、いわき市を舞台に5年間で計30カ所の作成を予定している。
初回のツアーには15人が参加し、佐糠町出身の正木里奈さん(27)をサポーターに、JR植田駅から3時間半ほどかけ、約6・3kmを巡った。自ら育った街の変遷が紹介されたほか、正木さんの両親らも交え、企業城下町として発展してきた様子に理解を深めた。
正木さんは「自分の思い出を含め、この街について皆さんと共有できる機会がうれしい。私も地元をより知っていきたい」と笑顔を見せた。
ニュース