市は10月をめどに、無料通信アプリ「LINE(ライン)」を活用し、行政サービスのメニューを集約した「LINE市役所」の運用を始める。市による構造改革の一環で、市民の利便性向上をデジタルによって実現する。
現在の市公式LINEの機能が拡充され、スマートフォン等でマイナンバーカードによる各種証明書の発行や、決済・電子キー付与まで含む公共施設予約、公立小・中学校と保護者との連絡などが可能になる。将来的には給付金の受け付けも実装するという。
内田市長が30日、定例の記者会見を行い、来年度の構造改革の取り組みとして発表した。市によると、LINE市役所のように、包括的に行政サービスを展開するのは県内初という。
セキュリティーを懸念する声に関しては、市の担当者は「LINEの運営に個人情報を渡す訳ではなく、専門のIT企業と万全の体制で取り扱っていく」と理解を求める。
市役所窓口のデジタル化も促進させる。マイナンバーカードで、申請書類を書かずに作成できる仕組みを構築し、1件当たりの手続き時間を約15分から約5分にする。
市立保育所でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)を深めていく。多忙な保育士の業務を支えながら、保育所と家庭をデジタルでつなぎ、子どもの安全の確保と保護者の安心感を高めていく。
日常連絡や、登降園、発育・健康の管理をアプリで共有するとともに、保育士の書類作成業務を省力化し、子どもと向き合う時間を生み出す。
こうした動きに対し、内田市長は「東日本大震災や水害からの復旧もあって、都市部や自然災害が少ない地域と比較すると、いわき市はデジタル化が遅れている。だからこそ他の自治体より先んじて、最先端のものにチャレンジしていく」と意義を強調した。
定例の記者会見では、来年度の行政組織改正についても示された。主な内容のうち、将来の医療人材育成として、中・高生から研修医まで切れ目なく地元とかかわることや、医師不足解消をより強く進めるため、地域医療課を再編した「医療対策課」を設ける。
同課には、課長補佐級のポスト「医師招聘(しょうへい)推進企画官」を配置し、市医師招聘専門員兼市医療センター顧問の平則夫氏とも連携して、医療提供体制を整えていく。
中山間地の移動手段確保や、路線バスの減便・廃止方針、鉄道利用の活性化に向けては、都市計画課の総合交通対策担当を独立させ、「公共交通課」として体制を拡充・強化する。
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