市と東北大災害国際研究所、九州大データ駆動イノベーション推進本部、イオン、イオンモールの産学官5者は6日、3月3日にイオンモールいわき小名浜(通称・浜イオン)をメイン会場に、太平洋沖で発生した地震による津波を想定し、デジタル防災技術の実証実験を兼ねた避難訓練を開催すると発表した。
全国初の取り組みで、市が掲げる「防災DX(デジタルトランスフォーメーション)」の実現に向け、スマートフォンアプリによる避難誘導や、生成AI(人工知能)を交えた避難所運営のサポートを展開する。実証実験を兼ねた避難訓練は、科学技術振興機構(JST)の未来社会創造事業の支援を受け、九州大データ駆動イノベーション推進本部の教授・ディレクターで、東北大災害国際研究所特任教授にも就く大石裕介氏が主導する。
当日はスマホを活用し、実際の風景に、AR(拡張現実)で避難経路や避難場所、注意を促すメッセージを重ねた「実空間メタバース」を確認しながら、浜イオンへ。到着した後は、あらかじめ市のマニュアルを学習させたAIアバター(分身)から避難に関する情報を取得する。
スマホで使用するアプリは、VPS(ヴィジュアル・ポジショニング・サービス)と呼ばれる位置特定システムを用い、正確な場所や向きが認識できる。避難途中で火災や倒壊などの現場を遭遇した際には、アプリからの報告も可能。市の災害対策本部と共有し、新たな避難ルートの選定や、ほかの避難者に向けた情報発信につなげていく。
「位置情報からどこが歩けるかが分かり、空間に文字が置けることで住民にメッセージも送れる。アプリによって、地区外の人も含め、誰もがスムーズに避難できる」と、その有効性を語る大石氏。緊急時に限らず、地域のできごとを発信でき、例えば浜イオンは有事の際には避難先として表示されるが、平時には店舗案内や宣伝が載せられる。
AIアバターは、設置されたデジタルサイネージ(電子看板)やタブレットのカメラとマイク、スピーカーと連動し、2次避難所への移転や、り災証明書の取得方法で効果を発揮するという。
また年代や表情に配慮した回答も行えるため、大石氏は「異性が相手だとしにくい問い合わせでも、アバターであれば気兼ねなくできるのでは」と話す。内容が緊急事案と判断されると、災害対策の職員にレポートが送信され、避難所の状況がすぐに把握できる。
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