アマチュア化石研究家で、鈴木製麺(四倉町西二丁目)会長の鈴木千里さん(74)が、大久町の市アンモナイトセンター近くの双葉層群足沢層で発見したイノセラムス科の二枚貝の化石6種類の中に、国内未確認の種「クレムノセラムス」が含まれていた。
化石は20年近く前に発掘した後、県立博物館(会津若松市)に寄託されていた。鈴木さんを含む同館学芸員の猪瀬弘瑛さん、産業技術総合研究所地質調査総合センター(茨城県つくば市)の利光誠一さんの共同研究グループが最新の研究成果をもとにあらためて精査し、明らかとなった。
イノセラムスは、アンモナイトとともに恐竜と同じ時代を生きた二枚貝で、中世代白亜紀の地層を時代区分するための重要な示準化石とされている。いわき市に分布する足沢層からは巨大アンモナイトをはじめ、ハドロサウルスなどの恐竜、クビナガリュウなど貴重な化石が多く見つかっている。
これまで同地層は、白亜紀前期~中期コニアシアン(約8980万~8800万年前)を示すとされていた。
同研究グループはいわき市の恐竜時代の地層が、従来の研究より約100万年古く堆積した可能性があることを指摘。同層の年代について詳細が解明されれば、これまで市内で見つかった化石標本全体の価値が高まるとともに、日本の恐竜時代について、海外との比較研究が進むきっかけにになることも考えられるという。
小学生のころから、古い時代のものにロマンを感じる『化石少年』だったという鈴木さん。少年時代は高校教師で、四倉史学会に所属した故・小桧山元さんの教えを受けながら、化石や土器の発掘に励んだ。
1980(昭和55)年に本州最大級(当時)のアンモナイト化石を発見。85年には日本最古級のハチ入り琥珀、2003(平成15)年にアリ入り琥珀(こはく)などの貴重な化石を次々と発掘してきた。自身の名前が入った新種を含め、数えきれないほどの化石標本を見つけ、その後の研究につなげている。
「アマチュアには限界があるので、研究者の協力を仰ぎながら活動している。正式に論文にしていただき、成果が認められたのは光栄なこと」
いわきを舞台に化石発掘を初めてから60年。豊富な経験とネットワーク、フィールドワーク力で「70代半ばになった今も山を歩いている」といい、「いわきの地下に眠る化石の魅力を世界に発信したい」という長年の夢をいまも変わらず追い続けている。
(写真1枚目:日本未確認だったクレムノセラムスの化石=中央左=等/県立博物館提供 2枚目:店舗の化石展示コーナーに立つ鈴木さん)