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小名浜・寿司れすとらん小太郎 約60年の歴史に幕 物価高騰、後継者問題などで

 小名浜西君ケ塚の「寿司れすとらん小太郎」が11月30日のランチ営業を最後に、同地でおよそ60年続く老舗すし店の看板を下ろした。同店を運営する有限会社小太郎の2代目社長・鈴木正継さん(65)は「70歳まで続けるつもりだったけれど、物価高騰や後継者問題などさまざまな事情が重なり決断した」という。
 最終日は予約客のみの「貸し切り営業」となり、往年の常連客から「メヒカリのひすい揚げ」などの名物メニューに次々にオーダーが入った。
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 この日の朝、鈴木さんはいつも通り仏壇に線香を上げ、父に語りかけた。「今日で終わりだよ」
 かつては弟子たち7~8人と厨房を回し、にぎやかに「まかない」を囲んだ思い出もよみがえる。厨房のホワイトボードに書いた「忘己利他」は鈴木さんのモットーだ。「自分よりもまずは人に尽くし、喜んでいいただくこと」を信条に店づくりに、そして地域貢献にも励んできた。
 同店は常磐炭鉱の閉山に伴い、新天地を求めて小名浜に移り住んだ父・次夫さんが1965(昭和40年)9月にオープンさせた。正継さんは東京の割烹料亭で6年間修業後、24歳で同店に入社。父とふたりで店を大きく育ててきた。親しみやすい店構えで家族のお祝い事や法事、商談にも多く利用され、地元に愛される店だった。
 正継さんは技術研さんにも熱心で、全国すし商環境衛生同業組合連合会の技術コンクールで銀賞受賞、県コンクールでは2度の最優秀賞に輝くなど幾多の受賞歴もある。2004(平成16)年には卓越技能者県知事表彰、14年には市の技能功労者表彰を受け、いわき調理師会会長、磐城料飲業会顧問など要職を務める。
 鈴木さんの匠(たくみ)の技術は華やかな「細工寿司」にも表れる。厚さ1mm程度に研いだ柳刃包丁でイカやサヨリなどの素材に微細な切り目を入れ、花開くような仕立てで見る人を驚かせた。また、独創的な海鮮和食メニューの開発に励み、地元食材メヒカリを使った「ひすい揚げ」は料理コンテストで最優秀賞を受賞した。
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 最近はメイン素材となる魚介の価格上昇にも苦しんだ。「まず魚が手に入らない。サンマ、カツオ、ウナギ、ウニ、イクラ……どの食材もずっと高値続き。思い切って値上げしないと赤字なんだけどお客さんのこと考えると、踏ん切りがつかなかった」という。借地契約のタイミングも重なり、10月末に廃業を決断し、常連客に知らせながら最後の日を迎えた。
 しばらくは片付けで忙しく行き来するそう。「次は小料理屋でもやりたいという気持ちもあるけど、今後のことはまだまだ。少し休んでゆっくり考えたい」と寂しさを追いやるように語った。
 (写真:最後の営業日、すしを握る鈴木さん)

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