2016.11.01
記者の必需品に『記者ハンドブック・新聞用字用語集』がある。「差別語、不快用語」の項目では、例えば、くず屋、人夫という語は、それぞれ「再生資源回収業」「作業員」とすることが記されている▼そして「性別、職業、(中略)身体的な特徴などについて差別の概念を表す言葉、言い回しは使わない。基本的人権を守り、あらゆる差別をなくすため努力するのは報道に携わる者の責務」とある。これに異論はない▼が、井上ひさしの『ブラウン監獄の四季』を読み、少し認識が変わった。中には氏が放送作家として関わったテレビ業界のあれこれが書かれているが、放送用語をチェックするNHKの考査室のことが出てくる▼考査室は氏に、差別用語の書き換えを指示するのだが、これに対する氏の考えの一つは「内容が変わらないうちは、どう言い換えてもそれはごまかし。呼び名だけを耳障りのよいものに変えるのは、悪質なすり替え」というもの。考えさせられた。