2020.10.2
実家に「下り藤」紋入りの裃がある。武家の出ではないが、先祖は幕末ごろ磐城平藩に多少出入りしていた商人であったようだ。時の殿様からいただいたと伝え聞いていたが、事実を確かめたことはない▼平イコールお城山といえば、大げさだが旧城跡地域に慣れ親しんだこちらにとってはその感が強い。息せき切って坂を上り、城址跡の原っぱから眺めた市街地の景色。朝夕には八橋検校「六段の調」が流れ、時を知らせた▼先日、市教委などが主体に「平城跡」発掘調査説明会が現地の磐城平城本丸跡地で行われた。発見された御殿跡の遺構の一部を公開しながら、出土品も展示され、市民ら20 0 人が足を運んだ▼こちらは浅学ゆえに理解度はいま一つだったが、ある掘り下げた箇所から半世紀前の記憶がよみがえった。6本の杭である。平城再建工事が中断した際、地表にさらされた数本の杭を当時見た。壮大な計画は幻と化した。夢よ再びはもういい。