子どもの生き抜く力育む
「子どもの生き抜く力育む」
特定非営利活動法人VIDA理事長 嶋村 仁美さん(泉)
スペイン・カナリア諸島出身の嶋村仁美さん(54)=泉在住=がいわきに移住したきっかけは、東日本大震災。神奈川県小田原市で立ち上げたVIDAの前身「子ども自然学校わくわく探検隊」に通う小田原の子どもを連れ、市内の仮設住宅に宿泊したのが縁だった。その時出会った子どもとの約束を守り、長くいわきに通いながら学童保育「放課後児童クラブ泉キッズCAMP」を設立。同地に障がい児が通う「放課後等デイサービスアミスター」も開き、自然の中で子どもたちの生きる力を育てている。
地上の楽園カナリア諸島で過ごした幼少期の思い出といえば、1カ月に及ぶサマーキャンプ。親元を離れるのが寂しくても、帰るころには仲間と離れがたくて泣いた。
帰国後、人間関係に悩んだ思春期も自然に身を置き、火と向き合うと素直になれた。「自然には人を変えてしまう力がある」。そんな〝キャンプマジック〟に魅了され、専門学校卒業後に勤めた東京都青少年教育文化振興会で野外活動を担当。その後勤務した小田原の幼稚園時代に子ども自然学校わくわく探検隊を発足させ、実体験が希薄な子どもに自然の素晴らしさを伝え続けた。
いわきを最初に訪れたのは、震災ボランティア。「ソロキャンプで長期滞在するうち、被災した方が『そんなとこで寝てんなら泊まってけ』と声をかけてくれて。独特の〝なまり〟も親しみが持てました」。しかし福島に通う嶋村さんを小田原の子どもたちが心配するようになり、「じゃあ、みんなで現地に行ってみよう」とキャンプを企画した。
同25年3月、希望者8人とともにいわきへ。双葉郡広野町の仮設住宅に一泊した帰り際、嶋村さんに「また来るねって言って、来た人はいないよ」と言い放った女の子がいた。その子との再会の約束を果たすべく、年2回の「絆(きずな)キャンプ」を10年間続けた。
子どもたちは成長し、今も友情が続いている。自身もいわきに通ううち、すっかり仲間が増えた。30年3月には学童保育を開所して本格移住。建屋内に放課後等デイサービスを併設し、毎週土曜に両施設合同でキャンプや外遊びを行う「わくわく探検隊」も始まった。
子ども時代の経験1つひとつが財産となり、一生を支えると信じている。だからこそ、毎瞬手を抜かず全力で子どもと向き合う。「最近、かかわった子が会いに来て、私みたいな仕事をしたいって言ってくれたんです。そういうのが一番うれしい」と笑顔をみせた。