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ふるさと自然散策・いわき昆虫記101(12月12日掲載)

文と写真・ 鳥海陽太郎(いわき地域学會会員)

クロスズメバチ

冬の公園に黒い小さな雀蜂

 鮮やかな赤や黄色に染まっていた広葉樹の葉もすっかり落ちて、残り僅か。季節は確実に冬を迎えているが、温暖ないわきならば、まだ活動中の昆虫に出会えるはずだ。平上高久地内の「いわき公園」を散策して、冬眠前の虫を探した。
 丘の上のサザンカが、花いっぱいにデコレーションされたクリスマスツリーのようで見事。鮮やかなピンクの花は、明らかに虫を誘っている。近づいてみると、ミツバチほどの小さなハチが飛来していて、けっこう多い。スズメバチ科の中の最小種「クロスズメバチ」だった。
 全身真っ黒で白い横縞模様がある。体長は僅か10~12㍉で可愛らしいが、正面から見た顔は凶暴なオオスズメバチそっくり。毒性も攻撃性も弱いと言われても、必要以上の接近はやめておこう。
 スズメバチ科の働き蜂の多くは、寒さの訪れる11月には死んでしまうが、クロスズメバチの活動期は12月までと長い。地上に営巣する他のスズメバチと違って、温度変化の少ない土の中に巣を作るというのがその理由だとか。
 クロスズメバチは社会性昆虫で、1匹の女王蜂、働き蜂、雄蜂成虫と、それらの幼虫で構成された生物集団(コロニー)が、1つの巣を中心に暮らす。働き蜂は捕らえた小昆虫を幼虫に与え、成虫は幼虫から出る分泌液を貰って生きている。ミツバチのように花の蜜を巣に運べないクロスズメバチが、サザンカの花の中で吸蜜していたのは、巣の中にはすでに幼虫がいないからなのだろうか。
 厳しい寒さが来ると、女王蜂も働き蜂も雄蜂も死に絶える。巣から飛び立った新女王だけが単独で朽ち木の中などで越冬し、新世代を担うことになる。

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