2010.10.29
「秋の読書週間」が27日からスタートした。ここ数年、出版業界も不況続きと聞くが、全国紙の広告欄を見ると人気作家の書籍などは何万部、何十万部突破とうたわれている▼書評で取り上げられ、興味を引く本でも1冊千数百円、あるいはそれ以上になるとなかなか手が出ない場合もある。そんなときに便利なのが図書館。最近、借り受けたのが600ページにおよぶ『開高健 一言半句の戦場』(集英社)▼亡き作家の未収録作品を紹介している同書に映画評論家淀川長治さんとの対談があった。無類の映画ファン同士が古今の作品について批評を展開するもので、文章を追うごとに独特の淀川節にかの文豪もたじたじになる場面が多々ある▼若い時の読書は必要だが、いきなり開高健を読めとすすめているわけではない。少しずつ読書を続けることで、熟成したワインのように知識が積み重なり、後に役立つことがある。活字を追う視力が衰えた世代から伝えたい。