2011.03.04
ロングセラーを誇る古谷三敏のコミック『レモンハート』。古今東西の酒のうんちく話と同名のバーに集う常連たちの人間模様が愉快に描かれている▼各巻が出るごとに購入しているが作画の背景、ストーリーともシンプルだった初期作品が好みだ。ある話では、親の期待に応えられない失意の浪人生が登場。身の入らない受験勉強の合間に、店を訪れる▼ストレスのため、酒の代わりにミルクを飲む浪人生にマスターが差し出したのは、薬草酒「アンゴスチュラ・ビターズ」。茶褐色で苦味の強いアルコールだが、悪酔いや体調が思わしくない場合などに飲まれることがある▼さらに居合わせた客が国立大医学部の卒業証書を見せ、一同の前で燃やしてしまう。元気を取り戻し、店を辞す彼。そのあと客は「受験時期には、ああいう人が多いので…」と同じ証書を何枚も取り出し、話が終わる。不正行為で逮捕された予備校生のニュースに、この1話を思い出した。