2013.07.01
春の初めから気になっていたのだが、書店の目立つ位置に社会生活の手引書いわゆるマニュアル本がやたら並んでいる。当初は新卒者向けかと思ったが、夏を迎えても陳列場所は変わらない▼ブームなのか、需要があるのか。内容もまた気になる。暮らしやビジネスのマナー、ルールならまだしも「大人としての口のきき方」とか「他人の心理の読み方」「デキる人間と思われる所作」といった類も少なくない▼興味も手伝い1冊を手に取った。「ああ、これが大人のもの言いなのか」などと感心した一方で、こういうことは頭から知識として入れるものだったか―と疑問も感じた▼そんな折、英文学者外山滋比古氏の新著で「知識と思考は仲がよくない」という言葉に出合った。「知識が増えると自分で考えることが減り、やがて考える力が弱くなっていく」そうだ。結局大事なのは、経験を重ねつつ自ら考えていくことで、それ以外に「大人になる」近道はないのだと思う。