2015.08.31
8月末の今が、1年で一番寂しいと感じることがある。うだるような暑さの中、祭りや盆でにぎわった月前半とは、全く違う空気がまちに流れ、夕暮れの早さに物悲しさを覚える人も少なくないだろう▼季節の変わり目にはいろいろな感慨がある。冬から春へ移る時期には、寒さから解き放たれほっと気持ちが和む。春から夏へは、さらに開放感と躍動的な季節への期待度が高まる▼そして秋から冬へは、寒さへの備えと年末年始に向けた慌ただしさとで緊張感に包まれる。が、夏から秋へのこの時期は、夏の思い出が新涼とともに遠ざかる一方、実りの時にはまだ少し間がある中途半端さが、より心の空洞を大きくするような気がする▼8月が終わることを意味する「八月尽」なる秋の季語がある。末日を尽日ともいうことによるが、「尽」に「末」にはない趣を感じるのも、涼しさの中で薄れゆく夏の余韻への寂りょう感からか。「八月尽の赤い夕日と白い月」(草田男)