2015.12.28
大掃除の途中、整理していた本棚の1冊を読み始めた。四倉出身の民俗学者で13年前に他界した和田文夫氏の『土の味』だ。昭和57年の弊紙連載をまとめたもので、土の中で育った作物が人の暮らしとどうかかわってきたのかが記され、「昔のいわき」が伝わってくる▼中に〝セチギ〟いう語を見つけた。正月に使う薪を指し、12月13日に持ち山からすじのいいクヌギを選んで切ってきたそうだ。正月にはこの薪で若水を沸かし、飯を炊いた▼ガスや電気のない時代の話だが、人々が正月をどれほど大切にしていたを感じる。思えば店頭にズラリと並ぶしめ縄も、昔は家で丹精して作ったものだった▼そのころを知る人もだいぶ減ってしまったと思う一方、手掛からずでコンロのスイッチを入れ、『土の味』を「名著」と評したある先達の言葉に首肯した。また和田氏の後書きにあった「土はすべてのものの味の母体だろう」も、ぜひ伝えおきたい一文として記させていただく。