2016.06.03
20年前、奈良県を旅した。写真家土門拳を気取り、山深い室生寺までも足を延ばした。今思えば、台風で損壊する前の優美な五重塔を拝めただけでも幸いとする▼旅の途中、名前は忘れたが近鉄の駅に降り、長谷寺に向かった。途中のシックな街並みを写真に収め、寺に着いたがどうにも観光本位の感がぬぐえず、少々がっかりした。それでも、僧侶の姿が多くにぎやかな雰囲気だった▼新しい住職が任命され、お披露目する晋山式に立ち会えたのも、もうけもの。色鮮やかな袈裟が記憶に残る。さて先日、平赤井のお寺で晋山式が執り行われた。前住職が亡くなってから35年間、近隣の同宗派寺院が兼務し、仏事を続けてきたという▼広大な敷地に大伽藍などではない。ただ古くから地域に根ざし生活に溶け込んでいたのだろう。年若い和尚さんだが「これでひと安心した」との声を聞いた。これからずっと地域住民とともに喜び、悲しみを共有していくであろう。