2016.07.04
経済小説『ハゲタカ』の著者として知られる真山仁。2月に出した『海は見えるか』は、東日本大震災から1年後の津波被災地の小学校が舞台の短編連作集だ▼一昨年に出た『そして、星の輝く夜がくる』の続編で、主人公は神戸から来た応援教師の男性。阪神・淡路大震災で妻子を亡くしているという設定だ。彼が向き合う被災地の子どもたちの心の揺れと成長が描かれている▼手に取ったきっかけは、表題作。防潮堤建設が決定した中で、震災で変容した海岸の復活運動に児童たちが参加し、それが問題になるという内容だった。未来に向け、故郷の海岸の美景を取り戻したいという子どもたちの願いを通し、人命を守るためと高く造られる堤防の意義をあらためて、問いかけられた思いになった▼各所で建設が進む防潮堤。そのどこでも、高さに対する安心感と不安双方の声が聞かれる。が、自然と対峙して生きる中で、正否を見極めることは、難しいと感じている。