2023.07.11
もう四半世紀前の話だ。サツ回り(警察担当記者)をしていた当時、受け持つ警察署を訪れてから帰宅した。「何もないよ」と優しく諭されても、1時間は署内で待った。朝も同様、出社前に必ず立ち寄った。いわゆる〝夜討ち朝駆け〟と呼ばれる取材手法だ▼暇そうにソファーに寄りかかり本を読んでいると、声を掛けてくれる。自然と顔見知りになり、雑談からネタが生まれる。警察官も記者との何気ない会話から街角の話題を知る。〝癒着〟ではない、一定の距離を置いた〝密着〟の関係が生まれる▼引退された幾人とは、今も親交が続く。プライベートを削っての活動は大変だったが、それ以上に得たものは大きい。震災で生き残れたのは、現場で培った危機察知能力のおかげだ▼しかし働き方改革を背景に、夜討ち朝駆けは時代遅れになりつつある。若い記者は気の毒だ。何をもってスキルと人脈を上げるのか。常に高い意識を持たなければ、成長はままならない。