2023.12.05
大学進学を前に、将来何をしたいのか、何者になりたいのか長いこと自問自答した。安定志向は持ち合わせていなかったため、公務員に興味はない。そんなときふと手に取ったのが、エジプト史に挑む考古学者の新書だった▼横山光輝の三国志で始まった歴史への関心は吉川英治、羅貫中で高まり、中国の歴史へ。勤労の意識は薄かったが、漠然とながら歴史に携わる仕事に就ければとの思いが膨らんだ▼直木賞作家の澤田瞳子さんは歴史研究家などのバックグラウンドを生かし、デビューを果たした。先日の講演会も考古学者の言葉を引用するなど時折、歴史家としての顔が見え隠れする。作家も歴史と携われる仕事と再認識し思わず笑みがこぼれた。記者もそうか▼30年後に新書の執筆者と、取材で顔を合わせることが叶った。人生の岐路で氏と出合わなかったら今はない。氏は80を過ぎて尚、新たな発掘調査に挑むという。老いてますます盛んな生き方に刺激を受ける。