『ひとりで食べたい』
著 者:野村 麻里
出版社:平凡社
価 格:1980円(税込み)
孤食だけど孤独ではない1人で食べる楽しみとは
この作品は、食事を通じて考える「ひとり」という環境を作者の経験を元に書いた作品です。
作中ほとんどが食事の話ですが、真に伝えたいのは「ひとり」の楽しみ方です。亡き友人との思い出で感じる食の喜びや薦められて訪れた土地とお店での発見、読んだマンガでの新しい食の楽しみ方など、「ひとり」だからこそ感じ得る話ばかりです。
特に、作中のラーメン屋「一蘭」の話で、店内に「味集中カウンター」という仕切りが登場します。これは他の一切を遮断し、味だけに集中してもらうためだそうです。ここで作者は、「あなたの味覚はあなただけのもの」と表しています。この一文で「ひとり」の楽しみ方の際たるものが食事だと感じました。
「ひとり」の環境は食事の感動をより鮮明にする隠し味なのです。コロナの影響で「孤食」が一般化し、昔ほど「ひとり」が珍しくない世の中になりました。ぜひ、この機会に本書を参考にして「ひとり」の楽しみ方を見つけてみてください。
(鹿島ブックセンター勤務)
※紹介する人:高橋 譲さん