『ちびねこ亭の思い出ごはん』
著 者:高橋 由太
出版社:光文社
価 格:660円(税込み)
死者との思い出の料理を食べると不思議な事が…
主人公の琴子には兄がいる。舞台の主役に抜擢され、さらに翌年にはドラマのオーディションを勝ち抜き、主人公の親友役という大役を手に入れ、週刊誌やテレビに取り上げられるほど注目の新人俳優だ。
そんな兄と偶然一緒になった帰宅途中、兄は琴子を庇い交通事故で亡くなってしまう。深い悲しみと後悔でいっぱいの琴子はある日、兄の墓参りに出かけた。そこで、兄が所属していた劇団の座長である熊谷と鉢合わせする。琴子も劇団に顔を出していたので、熊谷とは顔見知りだった。
彼は、憔悴していた琴子の顔を見て、「ちびねこ亭」について話を切り出す。そこは、兄が熊谷と生前よく通っていた食堂で、死者との思い出のごはんを食べると不思議な現象が起こるという噂があった。
琴子は半信半疑だったが、兄に会いたい一心でその食堂を訪れてみることにした。そこで、彼女が体験した不思議な現象とは?
短編集になっており、一話ごとに思い出ごはんのレシピが載っているので、読後に実際に作って楽しむこともできる。主人公たちや死者たちの想いにふれ、前向きな気持ちになり勇気づけられる一冊だ。
(鹿島ブックセンター勤務)
※紹介する人:池田 理紗さん