『監禁依存症』
著 者:櫛木 理宇
出版社:幻冬舎
価 格:825円(税込み)
性犯罪者を救う辣腕弁護士の息子が誘拐された…
性犯罪者の弁護を専門とする小諸弁護士は、三代続く弁護士の家庭で育った優秀な弁護士です。
その手腕をもって数々の事件で示談を成立さ
せ、非情にも多くの被害者たちを泣き寝入りさせてきました。また被害者を執拗に追い詰める彼の証人尋問は、ある種のエンターテインメントのような人気を誇り、美名よりも悪名で有名な弁護士でした。
そんな小諸弁護士の幼い一人息子が、ある日何者かに誘拐されてしまいます。しかし小諸弁護士を恨む人物は多く、犯人像が浮かび上がらないまま警察の捜査は難航します。
誘拐されたのは罪の無い子供ですが、同情し難いほどに小諸弁護士の所業は悪辣で、かつて彼が貶めてきた性犯罪事件の被害者やその家族たちの怨嗟(えんさ)が、陰鬱極まるストーリーの中へと読者を引き込みます。
子を想う親の心理がもたらす結末に誰もが圧倒される、他人の不幸を娯楽として消費する社会へ警鐘を鳴らすような一冊です。
(鹿島ブックセンター勤務)
※紹介する人:武田景佳さん