『発掘調査をしていたら、考古学者が怖い目にあった話』
著 者:大城道則、芝田幸一郎、角道亮介
出版社:ポプラ社
価 格:1760円(税込み)
専門書ではなく考古学者たちのユニークな冒険譚
一見、インディ・ジョーンズばりの冒険譚や古代遺跡の呪いがイメージされるタイトルだが、実際は、リアルな発掘現場と、それにまつわる悲喜こもごものエピソードがぎゅっと詰め込まれた、考古学者たちの好奇心と遊びごころ満載のユニークなノンフィクション である。
執筆しているのは、それぞれエジプトやシリア、ペルー、中国などで長年発掘調査に携わってきた立派な専門家の先生方だが、飛び出してくるエピソードは、「砂漠から地中海までカツオを買いにいく」や「恐怖のトイレ事情」「のんびり屋のヒッチハイク強盗」など。思わず、「どういうこと?」とページをめくりたくなるような見出しがずらりと並ぶ。
もちろん、遺跡ならではの不思議な現象や、墓に閉じ込められるなどのヒヤッとした体験も。多彩な引き出しで読者を惹きつけ、海外での発掘調査がいかにスリリングで魅惑的であるかをプレゼンしてくれる本書。
特に印象的だった一節は「飛行機の中でアヴェ・マリアが流れる」。揺れる乗り物の中でも特に飛行機が苦手、という著者が味わった空の上の極限状態。なぜアヴェ・マリアが流れたのか、気になる方はぜひ。
(鹿島ブックセンター勤務)
※紹介する人:八巻明日香さん