いのちを描く ボタニカルアートの世界(ヤツデ)
駆除しても旺盛な繁殖力
子供の頃の記憶だが、家の玄関や外の厠の傍には必ずと言ってよいほどヤツデが植えられていた。普段は気が付かないが、晩秋、大きな葉の間から乳白色の花穂が伸びて、花が咲くとその存在に気が付く。白い球状の花はやがて緑色の実になり、徐々に黒くなってボロボロ地面に落ちる。間違って服にでも付こうものなら、黒紫色の汁は洗ってもなかなか落ちない。「どこで付けてきたの!」。母に叱られたものだ。
ヤツデの印象が良くなかったので自分の庭には植えなかったのだが、たまたま鳥が運んできたのか、幼苗が出ていた。
即座に刈り取った。すぐにまた葉が出てきた。忘れていると結構な大きさに育っている。もちろん即刻切って捨てたが、そんなことでは終わらない。根で増えるのか葉が出てくる範囲が広がっていく。対処に追われているうちに思いもしなかったことが起こった。庭を眺めていた時、カーポートの隅っこに隠れるように育っているのを見つけた。それだけではない、何と、門の傍のサザンカの樹間にたわわに実をつけた花穂が今を盛りと茂っていたのだ。
迂闊だった。幼苗の退治に追われているうち侵入を許していた。これを切って絵のモチーフにすることに決めた。