いのちを描く ボタニカルアートの世界(オンシジウム)
作り物にはない本物の生命力
絵の題材を求めて近くのホームセンターに出かけた。店内にはシンビジウム等の大きな鉢物が並んでいたが、いまいち心が動かない。
一隅に黄色の細かい花を枝いっぱいに付けたオンシジウムがあった。見事な枝ぶりと花付きに目が惹かれた……、と、それが作り物であることに気がついた。
オンシジウムは中南米を中心に分布する400種を含むラン科の多年草で、樹上や地上に着生する。小さな黄色い花の群れ咲く様が、踊り子がスカートを広げて踊っている姿や飛んでいる蝶に似ていることから、「一緒に踊って」とか「可憐」とかの花言葉がある。
その造花は確かに精巧に作られていて豪華だったが、残念ながら、作り物には可憐さも生命の息吹もない。
思案に暮れた脳裏にふと浮かんだ。ちょうど、我が家には数年ぶりに開花したオンシジウムがある。花数わずか8個。数年前、小さな鉢を購入し、花後は放置していた株が気づけば花茎を伸ばし花開いたもので、蕾はすでに全開している。
貧弱な株だが生命に溢れている。当たり前だが、どんなに小さくとも、花数が少なくとも、必死に生きている本物の方が心に響く。モチーフは身近にあった。