いのちを描く ボタニカルアートの世界(クレマチス)
母が好きだった紫の大輪の花
クレマチスは、キンポウゲ科センニンソウ属のつる性多年草で、大輪の花弁のように変化した咢と鮮やかな色彩とで人気が高い。色は白やピンクや紫などで一重も八重もある。我が家にも3種類ほどあって春には数輪の花を楽しんでいる。
もう十数年前になるが、母がまだ元気だった頃、花が好きな母は自分の部屋の前に竹で格子を作り、そこに紫のクレマチスを這わせていた。そして大輪の花が開花すると長い間目を細めて見ていたものだ。
ところがある時、冬になって葉は萎れ茎が細い枯れ枝のように見えるようになると庭掃除の際、霜枯れの草と間違えて全部切られてしまった。母の反応がどうだったか覚えていないが、あんなにきれいだったのにという喪失感は大きかった。以来、クレマチスを見ると植えずにはいられない衝動に駆られている。
今年、新たなクレマチスが我が家に加わった。薄紫色がかった白色房咲きの中輪で花数が多い。新園芸種だろうか。菊かダリアのように見えて今までのクレマチスのイメージとはだいぶ異なっている。花が終わったら地植えにして来春、たくさんの花を付けてもらおう。枯れ枝と間違えて茎を切らないように注意しなくてはなるまい。