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いのちを描く ボタニカルアートの世界(キクバナイグチ)

暑い夏がくれた珍キノコ

 「暑い夏には珍しいキノコが生える」と言われるが、今年は確かにその傾向がある。
キノコは不思議な生物だ。本体は菌なので目に見えないが、生殖器官として目に見えるキノコを作る。その形や色は大小様々で、発生個所もいろいろだ。食用としてばかりでなく学術的・芸術的対象にもなる。
 知人が「こんなキノコが生えていた」と言って一袋持ってきた。見るとイグチ科のキノコばかり入っている。山はまだ夏らしい。
イグチ科には、アミタケなど食用として馴染みが深いキノコもあるが、傘も柄も大きく、触れると変色するなど個性的な種類も多い。
この時も黄色やオリーブ色のキノコに交じってひときわ大きな紅いキノコがあった。 傘が赤紫褐色のフェルト状の鱗片で密に覆われ、それが亀裂によって菊の花のような模様を呈している。傘や管孔は触れると瞬時に青く変色する。
『キクバナイグチ』、酷暑の夏で出てきたのか。普通はあまり見かけないキノコである。食用になるがこの外観ではひるむだろう。
しかし、絵のモチーフとして見れば、この機会を逃すわけにはいかない。

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