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ふるさと自然散策・いわき昆虫記102

成虫の姿のまま冬を越して

 平上平窪地内の里山へ出掛けた。
 到着早々、大型の野鳥がふわりと舞い、飛び去った。生態系の頂点に立つ猛禽類であることは確かで、動植物相が豊かな地域であることの証だ。
 オオイヌノフグリが青紫色の花を咲かせていたが、飛来する虫の姿が無いので雑木林内で冬眠中の昆虫を探してみた。
 堆積した落ち葉を掻きわけて出てきた地面には、ドングリやネズミの食痕のあるクルミが転がっているなど、さまざまなドラマが見えてくるから面白い。ムカデやクモなど多くの節足動物が土の中に潜んでいた。やっと探し当てた昆虫は、黄緑色をした体長13㍉の「ツマグロオオヨコバイ」だった。
 半翅目(カメムシ目)オオヨコバイ科の昆虫で、翅の先端(褄)が黒く、横に這うように歩く習性があり、イネの害虫として知られる体長5㍉ほどの小さな「ツマグロヨコバイ」より大きいことから名付けられた。体格は大型でも、食性の範囲が広く、大量に発生することも無いため、あまり害虫呼ばわりされていない。
 地面から出されて外気に触れると間もなく、背中に付いた埃を自身で払い除けて翅を広げて飛んだ。深い眠りの中ではなかったらしい。昆虫は、冬に備えて、堅い殻に包まれた卵や蛹などに変身して寒さから身を守るのが一般的だが、ツマグロオオヨコバイは、夏を過ごしたそのままの成虫の姿で越冬していたのだ。
 越冬態があまりにも無防備なので調べてみたら、分布の中心は東南アジアで、日本の本州が北限域にあたる。温暖化など話題にもされなかった頃から分布を北上して来ていて、冬眠の方法も知らずにいわきの冬を過ごしていたのだろう。

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