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ふるさと自然散策・いわき昆虫記103

早春に咲く花の受粉を担う

 平小泉地内の瑞光寺へ出掛けた。
 巨樹クスノキのそびえ立つ境内には、メジロやコゲラ、シジュウカラが集い、早春植物フクジュソウが満開だった。
 フクジュソウは、虫を呼ぶ魔法の黄色い花のよう。受粉を虫に託す虫媒花でありながら、蜜をつくる蜜腺を持たない。寒い季節に花を咲かせるためのエネルギー消費の節約で、甘い蜜の代わりに、太陽光線をパラボラアンテナ型の黄色い花びらの中心に集めた熱で、虫を呼び寄せるというのが作戦らしい。今回は、ここに飛来する昆虫の撮影が狙いだ。
 とても3月とは思えない暖かな陽気が災いしてか、なかなか花の中の高温の空間に誘われる虫が現れなかったが、そよ風が吹き、気温も下がったところで飛んで来たのが、体長8~10㍉ほどのハナアブ科の「フタホシヒラタアブ」だった。
落ち葉の下で越冬していた成虫が、早春植物の開花期に合わせて活動を開始したのだろう。全身黒色の体の平たい腹部には、3対の黄色い斑紋と2本の細いラインがある。全体のフォルムがニホンミツバチそっくりに擬態しているのは、身を守る毒針がないからか。口も吸血性のウシアブのような鋭さはなく、ハエのように舐める構造になっている。
 花の中での食事の様子を観察してみると、蜜を探す仕草はなく、初めから夢中でおしべの花粉を食べていた。ミツバチのように花粉を団子にして大量に持ち去ることもないので、フクジュソウの作戦通りだったのだろう。
 フタホシヒラタアブの幼虫は、植物に付いたアブラムシを食べて育ち、成虫は、花の受粉を担う送粉者なので、花卉や果樹の栽培にも有益な昆虫に違いない。

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