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ふるさと自然散策・いわき昆虫記107

山間のきれいな渓流に棲む

 仁井田川の支流、桧川の源流域にあたる四倉町駒込地内を散策した。
 小川のせせらぎが涼しさを誘い、カジカガエルが美しい音色を響かせていた。ニイニイゼミの鳴き声と、夏鳥サンコウチョウの軽快なさえずりが心地いい。桧川ではウグイが泳ぎ、その上をコバルトブルーに輝くカワセミが往来していた。
 こうした豊かな自然環境の中で出会ったのが、アメンボ科の「シマアメンボ」だった。山あいの水田の傍らを流れる用水路の水面上を、スイスイと泳いでいたのだ。アメンボ科昆虫の多くは池や沼などの止水域に棲むが、シマアメンボの生息域は山間の水のきれいな渓流などに限られるので、一般に目に触れる機会は少ないかもしれない。
 ずんぐりした体形で、体長はわずか5㍉ほどと小さい。黄褐色と黒い縞模様の体色は、水辺の砂地に同化する擬態となって天敵から身を守っているのだろう。頭部の先端からは長い触覚が伸びていて、その両側に張り出した前肢で舵を切って水上を泳ぐが、水面に落ちた小昆虫などの獲物を捕らえて口に運ぶのもこの前肢で行なっている。長い中肢と後肢がオールの役割を担い、強靭な推進力で流れに逆らって前進している。
 通常、シマアメンボには成虫でも翅が無い。今回撮影した個体を観察しても、翅の痕跡すら見当たらなかった。となると、梅雨の長雨で増水した渓流では、強い水流により生息域がどんどん下流域へと追いやられてしまうのではないかと心配になってしまうが、希に翅のある有翅型が出現するのだという。翅の無い成虫が流されても、翅のある次世代が飛んで再び上流域に戻るということなのか。

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