ふるさと自然散策・いわき昆虫記113
飛竜のごとく羽ばたく
2023年夏は、カやアブなどの攻撃から身を守る「おにやんま君」などの原寸大フィギアが脚光を浴び、ヒット商品となった。虫除けの効果のほどは定かでないが、「オニヤンマ」が皆に愛されるキャラクターだったことを知った。
そして迎えた2024年「辰年」は、このオニヤンマを代表種とする「蜻蛉(トンボ)」の年と言ってもいい。
十二支の辰には巨大な爬虫類を思わせる伝説上の動物「竜(英名:ドラゴン)」が当てられるが、蜻蛉の英名「ドラゴンフライ」は、水中で生活していたヤゴ(幼虫)から羽化した成虫が羽ばたき、天に昇るさまを竜に見立てて名付けられた。
羽化したばかりの日本最大の蜻蛉オニヤンマが上空を群れ飛ぶ光景は圧巻で、3億年前に繁栄した巨大な「原トンボ」を連想させ、自在に天空を舞う「飛竜」を彷彿とさせる存在感がある。
オニヤンマはオニヤンマ科の昆虫で、体長は小柄な雄でも9㌢、大柄な雌は11㌢を超える。エメラルドグリーンに輝く美しく大きな瞳(複眼)と強靭な大顎を持ち、全身黒地に黄色の縞模様の目立つ配色は、多くの肉食動物に特有のもの。
動作はきわめて敏捷で、がっちりとした体と大きな翅は優れた機動力と推進力の高速飛翔を可能にした。
小昆虫を瞬時に捕らえ、決して後戻りをせずに突き進む姿から「勝ち虫」と呼ばれ、戦国武将の甲冑などの武具の装飾として描かれた。
ヤゴは、平地や丘陵地、山地の小川や湿地など、流水域、止水域を問わず広範な水域に棲み、冬の間は水中でじっとしている。成虫が出現するのは初夏になるが、飛竜「オニヤンマ」は、激変する環境にも適応して大きく羽ばたくだろう。