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いのちを描く

ヒロハオチエダタケ

いのちを描く
ボタニカルアートの世界
冨田武子

大物不作の中で微小菌発見

待望のキノコシーズンに入った。例年だとキノコの情報が各方面から入るのだが今年はさっぱり来ない。気候も不順で、台風が次々と襲来するようになってからは夏が再来したかのように暑い日が続いている。
キノコは雨が降って土中の気温が下がると発生のスイッチが入る。発生し始めてから再び気温が上昇すると発生は止まってしまう。その後また気温が下がってもキノコの発生はないという。一日千秋の思いで待っているのにつれない話だ。今年の発生はこのまま無くなってしまうのだろうか。
だが、キノコ狩り対象の、いわゆる大物は不作でも、普段気が付かないような微小菌に出会ったりすることはできる。台風15号後の調査では採取菌数が50種弱とこの時期にしては少数だったが、その中にそのキノコはあった。
傘径7~8㍉、柄の長さ1~2㌢の白い小さなキノコが5~6本、大きな枯れ葉の中心葉脈から列になって出ていた。各々が小さな体を精いっぱい伸ばして存在をアピールしている。台風に促され、日照りや乾燥をものともせずやっと出てきたのだ。静かだがひたむきで強固な意思にしばらく目が離れなかった。「ヒロハオチエダタケ」という名前は後になって知った。

 

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