泉町の西山さん 震災伝えるフォトコンで最優秀賞 海開きの高校生フラ写す
東日本大震災により、被害を受けた青森県から福島県までの沿岸地域の〝千年先までも語り継ぎたい物語〟を見つけ出し、鎮魂や慰霊のために、各地の巡礼地を発信する東北お遍路プロジェクト。同団体が主催する「東北お遍路写真コンテスト」で、薄磯海水浴場での3年ぶりの海開きでフラダンスを披露した高校生たちを切り取った、西山栄さん(75)=泉町=が最優秀賞を獲得した。
西山さんは、高校時代の友人の影響で、就職後にカメラを購入してから、写真歴は50年。南相馬市出身で、高校卒業後は仕事により、移住した双葉郡富岡町で家族とともに過ごしていた。
写真愛好家団体の全日本写真連盟双葉支部に所属し、写真を通じて多くの仲間や地域との交流をしてきた。東京電力福島第一原発事故によって、いわき市に移った後も、カメラとともにさまざまな被写体に向き合い続けている。
これまで多くの写真を撮影してきた西山さんだが、「地域に根付く素晴らしい伝統を後世につなぎたい」との思いから、各地の伝統行事を追いかけてきた。いわき市では、平沼ノ内の伝統行事「水祝儀」、三匹獅子や流鏑馬などを収めてきた。
同プロジェクトでは、地域とともに巡礼の道を育て、記憶の風化を防ぎ、次の災害に対する防災意識を高めようと、「東北お遍路写真コンテスト」を行っており、7回目を迎えた昨年は、全国から約50の作品が集まった。
薄磯海水浴場での3年ぶりの海開きで、青空と塩屋埼灯台とともに、地元の高校生たちが、笑顔でフラダンスを踊る姿を切り取った作品が、震災、新型コロナウイルスを乗り越え、地域に戻ってきた活気が表現されていることが高評価を得た。
受賞に喜びを感じるとともに、西山さんは「いわきのいろいろな場所で出会った地域の人、写真仲間には本当に救われている」と話す。続けて、「時々、富岡に戻りたいと思うことがある。原発事故に対して思うこともたくさんある。でも、大好きないわきで今を楽しみたい」と柔らかい表情を浮かべた。