いわきFC・村主前監督 解任やむを得ないが 人柄・功績はこれからも残る
「選手に勝たせることができず、申し訳なく思っている」。14日付でいわきFCの監督を解任された村主博正氏は、敗戦後のインタビューで、誰が悪かったと言った記憶がないほど、必ず自分の責任を強調していた。
温和な表情と誠実さが持ち味だが、Jリーグの監督経験が無い中、初年度の昨季は破竹の勢いでJ3を制し、初参戦・初優勝の快挙とともにJ2昇格に導いた。選手からは「ぐりさん」の愛称で親しまれ、サポーターからサインを請われると、「自分でいいの?」と謙そんする一方で、内に秘める熱さは、まさに〝静かな闘将〟の言葉がふさわしかった。
J2に舞台を移した今季は、けが人が相次いでも、何とかやりくりしている姿も分かった。ただ負けが込んでいき、いつしか「勝ち点3を取るトレーニングをしていきたい」と繰り返すようになった。浮かない表情に迷いがあるように映った。
いわきFCの取材を重ね、インタビューでは積極的に試合中に感じた疑問や、采配のあり方を問いかけた。失礼な問いにも、村主氏は一つ一つ丁寧に答えてくれた。
驚いたことがあった。7日の天皇杯2回戦で、アウェーの徳島に赴き、試合前に選手の集合写真を撮った後、ふいに誰かに肩をたたかれた。振り返ると、村主氏が「こんなに遠くまで来てくれたの」と笑顔で語りかけてきた。敵地なので、取材先が遠隔地でも当たり前だが、そうした気遣いがうれしかった。
最近の試合内容を考えれば、解任はやむを得ない。むしろ遅かったくらいだ。声を上げないサポーターも優しすぎると思った。しかし村主氏が、いわきで築いた功績が無くなる訳ではない。「浜を照らす光」を体現し、いわき市、双葉郡に明るい話題をもたらしたことは揺るぎない。
またどこかのクラブで指揮を執る日を、楽しみにしている。(いわきFC取材班)