福島第一原発の処理水海洋放出に向けて 一連の工事完了 試運転も終える
東京電力福島第一原発の汚染水を浄化した後の処理水を巡り、今夏に予定される海洋放出に向けて、東電は26日、海底トンネルの掘削作業に使用した「シールドマシン」と呼ばれる掘削機を回収したほか、放出口に上蓋を設置し、一連の工事を完了した。
処理水を海水で希釈する設備の稼働状況を確かめるため、真水を用いての試運転に関しても、東電は27日に終了したことを発表した。東電によると、試運転は12日に開始し、水をくみ上げるポンプや、緊急時の遮断装置が正常に作動することが確認され、26日までに終えたという。
原子力規制委員会では28日から、使用前検査として、設備全体の性能について最終確認をする予定で、30日までの3日間にわたって行われる。使用前検査に合格すれば、海洋放出に関する設備面での準備が整う。安全性については、国際原子力機関(IAEA)による最終報告書の公開も控えている。
一方で政府と東電は2015(平成27)年、県漁業協同組合連合会(県漁連)と「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との約束を交わしているが、県漁連は反対の姿勢を変えておらず、議論は平行線のままとなっている。また、いわき市では4カ所の海水浴場が7月15日に海開きをするため、観光産業に対する影響も懸念されており、政府が最終的に、放出時期をいつとするかに注目が集まっている。
海洋放出では、処理水に残る放射性物質トリチウムの濃度が、国の基準の40分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満になるよう、福島第一原発の港湾外から取り込んだ海水で希釈した上で、海底トンネルを経由して、沖合1kmから流していく。