錦町の画廊喫茶「モナミ」 今月で閉店へ 地元の文化と食を支えた48年間
錦町の住民をはじめ、市内の美術愛好家たちに親しまれてきた老舗の画廊喫茶「モナミ」が30日、48年に及ぶ歴史に幕を下ろす。渡辺勝彦オーナー(78)と妻洋子さん(76)は、「長いようで短かった48年間。多くのお客さまとの出会いに感謝している。惜しまれながら閉店でき、光栄に思う」と一日一日を大切にしながら来店客をもてなしている。
喫茶店ブームの全盛期だった1975(昭和50)年4月。もともと絵の好きだった勝彦さんが、「地元の作家が発表できる場を提供したい」とギャラリーを組み合わせることで、他店との違いを図った。
当初は知人の作家から個展を始めた。やがて人の輪が広がり、いわき美術協会長などを務め、新世紀美術協会でも活躍した故・北郷喜三郎さんらの呼びかけで「モナミ会」が発足。月に1度、個展やグループ展ができるようになった。
モナミで定期的に展示をするための創作活動が契機となり、市民美術展覧会(市美展)のみならず県展、中央で入賞した作家もいた。勝彦さんは「中でも現在までモナミ会に尽くしてくれている広瀬諭さん(新世紀美術協会委員)の活躍は、特にうれしかった」と顔をほころばせる。交流を深めた作家が各地の展示会で入選した報告が、何よりの喜びだった。
モナミの魅力は展示スペースがあるだけにとどまらない。当時、各地に喫茶店がひしめく中、都内から喫茶店での調理経験がある男性を引き抜き、現在まで変わらない名物「モナミセット」の提供を始めた。同セットは当時、首都圏で流行っていた「オープントースト」と呼ばれた自家製の「ピッザトースト」がメーンの食事。評判を呼び瞬く間にヒットした。
勝彦さんが旅先で出合った山口県の「瓦そば」、名古屋の「鉄板イタリアン」からヒントを得て、鉄板に卵を敷き明太子スパゲッティを乗せたランチを考案するなど、モーニング、ブランチ、ランチも充実させてきた。
錦町で長く市井の食と芸術文化を支え続けただけに、閉店を惜しむ惜しむ声は多い。最後の展示は「モナミ48年の歩み展」だ。物故会員を含む約30点を週替わりで掲げており、最後の日まで〝変わらぬ味〟と「おもてなし」でこれまでの感謝を伝え続ける。開店時間は午前8時から午後7時(最終日は4時)まで。