好間・湯殿山神社 富山屋根工業が無償修繕 地域の伝統のために
好間町下好間の大舘城跡公園に隣接する湯殿山神社で、老朽化した本殿の状態を見かねて、地元の富山屋根工業(富山勝規代表取締役)が無償で修繕を始めた。勝規代表の父、勝男会長は御年79歳。「この年まで元気に仕事させてもらっていることに、感謝を込めて作業したい」。猛暑の夏、太陽の下で親子2代の職人が、玉汗をかいて作業に没頭している。
同神社がある山は飯野平城(通称・大舘城)の城跡で、岩城氏が8代120年にわたって住んだ場所。境内にある碑文によれば、同神社の縁起は寛永2(1625)年、法印宥浄が月山寺を開き、湯殿山権現を祀ったのがはじまりとされる。明治初期の神仏習合廃止によって現在の社号に。現在の社殿は、大正6(1917)年に台風で老木が倒れて壊れた神殿を広く寄付を集めて再建させたものという。
現在は下好間区(野﨑治彦区長)が社殿の管理をしている。9月第2日曜が例大祭で、区内の子ども会による子ども神輿が町内を練り歩く。勝沼英一副区長(74)は「子どものころはお祭りの日に映画上映もした。出店もあって子どもがいっぱいで、それはそれはにぎやかだったよ」と振り返る。最近はコロナ禍による中止が続き、人々の足もますます神社から遠のいているのが現状だ。
勝男さんは軽々と屋根に上り、「大きな仕事より、小さな仕事、瓦1枚の仕事を大事にしろ」という先代からの教えを大切に守り、親子2代で職人道を貫く。
勝男さんによれば、屋根は細かい木材を幾重も重ねた木羽葺きで、杉皮を使った補修も施されていた。「腕のいい職人の仕事。前の方が良かったなんて言われないようにしないとね」と笑顔で語り、「あと10年は現役で頑張らせてもらいたい」と心意気を見せた。
勝沼副区長は「区も財政難でありがたい。われわれの代で、地域の伝統を絶やす訳にいかない。これを機に少しでも地域の神社に興味関心をもってくれる人が増えてほしい」と完成に願いを込めた。