常磐線舞台芸術祭 いわき市でも始まる 青年団「銀河鉄道の夜」上演
東日本大震災・東京電力福島第一原発事故の被災地である浜通りを中心に、演劇や朗読劇、ワークショップを展開する「常磐線舞台芸術祭2023」は1日、錦町の勿来市民会館で、いわき市最初の催しとなる「銀河鉄道の夜」の公演が開かれた。7月31日に開幕した常磐線舞台芸術祭は、南相馬市小高区在住の芥川賞作家・柳美里さんが発起人で、13日までの2週間にわたって、「つなぐ、」をテーマに25のプログラムが予定されている。
2018(平成30)年に計画が始動した常磐線舞台芸術祭。JR常磐線が2020(令和2)年3月、原発事故によって不通となった富岡―浪江駅間が再開したことをきっかけに、人々のつながりの再生を込めた舞台芸術の祭典として、コロナ禍を経て実現した。
柳さんがプログラム・ディレクターを務めるほか、劇作家の平田オリザさんがフェスティバル・コーディネーターに就いている。勿来市民会館で披露された銀河鉄道の夜は、平田さんが宮沢賢治の名作を基に、フランスの国立演劇センターの依頼を受けて、児童演劇フェスティバルの参加作品として手がけた。
2011年1月に初演され、現地の子どもたちにも伝わるよう、多くの人と出会いながら、友人の死を乗り越えていく姿を描いており、どんな不条理にも向き合う必要性を説いている。
震災をまたぎ、平田さんが主宰する「青年団」によって、国内各地でも上演されている。2014年には震災・原発事故からの復興を願って、いわき芸術文化交流館「アリオス」でも行われた。今回は9年ぶりの再演となる。作品は1時間ほどの長さにまとめられており、青年団の5人の俳優によって、熱い舞台が繰り広げられた。
公演にあたって、平田さんは「常磐線舞台芸術祭のはえあるオープニング演目として、上演できることは何よりの喜びです」と話している。カンパネルラ役の永田莉子さんは「大切な人と自分は別の人間で、ずっと一緒にはいられない。『本当の幸せ』とは何かを考え続ける彼を演じると、とても身近に感じます」と寄せた。
常磐線舞台芸術祭のプログラムは、ウェブサイト<こちら>を参照すればよい。