アクアマリンふくしま 話題だった「泳ぐ寿司」 ホソウオノシラミと判明
小名浜のふくしま海洋科学館「アクアマリンふくしま」は7日、サーモンの寿司に似ているなどと話題だった同館の「ウオノシラミ属の一種」について、共同研究によって、種がホソウオノシラミと判明したと発表した。ウオノシラミ属は、世界で40種ほど知られており、日本近海では7種の報告があるが、口器の解剖が必要なため、死亡するまで種の同定はできなかった。
話題となった個体は2021(令和3)年4月から6月にかけて、北海道・羅臼沖の水深800~1200mで、漁師の手で刺し網に絡まって採集された。同館によると、これらの仲間は魚に寄生して体液を吸い、満腹になると離れる半寄生性の生活を送るという。
同館が同年7月、短文投稿サイト・ツイッター(現X)に写真を投稿すると、瞬く間に拡散し、2万7千件の「いいね」を獲得した。生態的に情報が不足している中でも飼育を続けたが、今年4月7日に脱皮不全で死亡した。飼育期間は652日だった。
死亡後に、水土舎環境調査部の斎藤暢宏・上席主任研究員が解剖した上、水産資源研究所の柳本卓・主任研究員がDNAに関して調査。同館の日比野麻衣・主任技師の飼育記録と合わせ、3人の共同研究から、メスのホソウオノシラミと結論付けた。これら内容をまとめた論文が、斎藤さんを筆頭著者として、7月31日付の水生動物の学術誌「アクアティック・アニマルズ」に掲載された。
日比野さんは「ホソウオノシラミを含むグソクムシ科は、水族館で飼育されること自体珍しい中で、SNSを通じて、生き物そのものを広く知ってもらうことができた。今回の成果を今後の飼育に生かしていきたい」と話している。
同館では現在、本館2階の親潮アイスボックスコーナーで、ホソウオノシラミの成体1個体が展示されている。また研究で使用した個体については、本館2階の飼育員の研究レポートコーナーで、特別に期間限定で公開されている。