宮下農水相 就任後初の来市 県漁連幹部との懇談や水産業者と意見交換
宮下一郎農林水産相は27日、就任後初めていわき市を訪れ、小名浜魚市場で、県漁業協同組合連合会(県漁連)の野﨑哲会長ら幹部と懇談した。宮下氏は13日に発足した第2次岸田再改造内閣で初入閣し、8月24日から始まった東京電力福島第一原発で生じる処理水の海洋放出に関しては、放射性物質トリチウムの迅速な測定や、中国による日本産水産物の全面禁輸を踏まえ、漁業者に対する必要な支援を進めていくことを強調した。
県漁連幹部との懇談は冒頭を除いて、非公開で行われた。宮下氏は小名浜魚市場の荷さばき施設も視察し、担当者から競りの状況を聞き取った。懇談にあたり、野﨑会長はあらためて海洋放出に反対の姿勢を示し、「この1カ月の動きが次の1カ月につながり、次の1年、5年、10年と問題なく続けられるよう、緊張感を持って取り組んでほしい」と伝えた。一方で懸念された新たな風評については、現状起きていないとし、「いまのところ、皆さん冷静に対応していただいている」と述べた。
宮下氏からは水産事業者支援に向けて、風評対策や漁業継続の計800億円の基金に加え、政府が新たに予備費の207億円を活用して、中国による日本産水産物の全面禁輸に対策を講じていく政策が説明された。野﨑会長は「対中国の問題は風評とは切り離し、長期的に考えていくべき」と応じた。
続いて宮下氏は、隣接する市観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」に足を運び、関係者と意見交換に臨んだ。小名浜あおいちでは、運営する水産加工業「上野台豊商店」の上野台優代表取締役が、いわき市の水産物ブランド・常磐ものが応援されている現状を紹介し、「より県外に発信するため、水揚げ量の拡大を図ってほしい」と要請した。
上野台社長によると、海洋放出の開始以来、インターネットショップも含め、前年比5~6倍の売り上げを記録しており、観光客からも励ましの言葉が寄せられているという。
ら・ら・ミュウでは昼食の時間も取られ、宮下氏は「さかな処まさ常」で、けさ沼ノ内漁港と四倉漁港で水揚げされた常磐ものとして、ホウボウやヒラメ、スルメイカ、イナダ、ショウサイフグの刺し身と、海鮮丼に舌鼓を打った。記者団から味の感想を聞かれると、「最高です」と満面の笑みで語った。