連休中、母親を連れて遠出した。立ち寄った高速道路のサービスエリアでは、いつになくバラエティーに富んだ地域ナンバーが目立った▼どこもいっぱいで休憩は一般道に降りてからの道の駅。店の棚にはパック詰めされたタラの芽やシドケなど地元で採れた山菜がずらり。春の訪れとともに山の恵みの豊かさを伝えていた▼お茶を飲みながら休んでいると、店の人が家で作った白菜の漬物をサービスで出してくれた。味がしみていてとてもおいしく、お礼のつもりで山菜を買い求めた▼帰りの車の中で母親が、いつになったら漬物が作れるのかねと。母親は毎年、近くの農家からいただく四季折々の野菜で漬物を作り、親類や近所の人におすそ分けをし喜ばれている。それが年老いてからの母親の生きがいにもなっていた。しかし原発事故後、近所の農家が野菜作りをやめてしまったため、母親もその後、漬物は作っていない。生きがいを無くした母親は何とも寂しそうだ。
片隅抄