10代の小説家と聞いて「それもありなん」の時代だが、読みごたえでいえば、やはり人生経験の豊富な「大人」の書き手の作品に分があるように感じる。喜怒哀楽を繰り返す人生の歩みが、小説のさまざまなシーンの構築に奏功するのだろう▼一方で私感ながら、短歌や俳句などの定型詩になると、若者ならではの感性の鋭さが輝く作品の多いことに気づいた。情景を凝縮させて表現する定型詩だからこそ、若さゆえの持ち味が存分に発揮できるのでは、と思っている▼そこで手前みそだが、本紙毎週木曜の「高校生文芸」。例えば10日付の磐城高・永沼絵莉子さんの1首「君のいる世界すべてが美しく魅える位置こそ私の世界」。恋の歌だろうが、けれんみもない素直さが心に残る。「若いっていい」、そんな気持ちになった▼1000年以上の歴史を持つ和歌を生まれて十数年の人間が詠む。文化継承の点でもすばらしいことだ。読者諸兄にもぜひ、楽しんでほしい。