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片隅抄

2010.08.06

 占領下、吉田茂首相の懐刀としてGHQ高官と渡り合った快男児、白洲次郎。英国仕込みのキングスイングリッシュを駆使し、日本の尊厳を守るなど近年、メディアの脚光が浴びたことは記憶に新しい▼彼の生活信条は「プリンシプル」(原理原則)と伝えられる。その流れだろうか、彼の遺言は「葬式無用 戒名不要」。遺族にとっては、厄介なことだったであろうが韋駄天と称された正子夫人のこと、見事に取り仕切ったのだろう▼昨年夏から今年にかけて、知人3人が亡くなり、いずれも家族葬で弔われた。先の1人は、死後2カ月すぎてから知らされ、続く2人は、ほぼ同時期に人づてで訃報を聞いた。だが遺族からの正式な通知はなかった▼家族葬とは、親族だけで葬儀を執り行うだけでなく、死去さえも公にしないものとは。家族の事情を察しながらも、お世話になった方々だけに忸怩たる思いが消えない。新盆も近いが、生前の姿を思い浮かべるだけだ。

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