今日は、岩手生まれの歌人石川啄木の忌日にあたる。彼の「ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」は、東北人のわれわれにとって、共感を呼ぶ1首だろう。歌集『一握の砂』に収められている▼今春、JR常磐線が品川駅まで延伸されたが、いわきの人々にとっての東京の玄関は、長らく上野駅だった。東京に出ている知人は「帰省のために上野駅に来ると毎回、いわき弁が耳に入ってきて、この短歌を思い出す」と話した▼当地出身の俳人皆川磐水氏も、啄木に傾倒した1人だ。著書では「平商業高生だったころに啄木を知り『一握の砂』などは何度も読み返した」と書いており、啄木忌を詠んだ句も幾つか残している▼その1つが「啄木忌雨の中のいわし売り」だが、氏は後年この作品を振り返り「昔、いわきの海岸では鰯がどこでもとれ、母はバケツで買っていた」と記している。これを読み、氏の鰯に関する懐古と啄木の訛への思いが交錯した。