浅学をさらすが、最近になって「老鴬」という言葉を知った。春を過ぎても鳴いているウグイスを指し、夏の季語でもある▼調べてみると、もとは漢詩で使われた言葉で、また実際のところ、この時期のウグイスは春よりも声高らかに上手に鳴くそうだ。そして、営巣する山で鳴くことが多いという。確かに、暑さを感じる時期に、山の方から「ホーホケキョ」の声が聞こえてくることがある。あれが「老鴬」かと感じ入った▼ところで、この語との出合いは、弊社のふるさと出版文化賞で優秀賞を受賞した伊藤一泊さんの句集『堂平』だった。第2章の表題が「老鴬」で、中に「老鴬や路地棹売りの車行く」の句があった▼立夏が過ぎた今に一読し、薫風漂う青空に響き渡る「老鴬」と「さおや~、さおだけっ」の声の競演が、すっと頭に浮かんだ。身近にある何げない情景が、伊藤さんにより温かみのある句となってわが身に届き、心を和むひとときをいただいた思いだ。