今年は終戦から70年の節目に当たるため、戦争関連の書籍類が数多く出版されている。実体験がない世代には伝聞、過去の史料などで知るしかなく多くを語るすべもない▼そんな中、昭和20年8月14~15日にかけ戦争終結を告げる玉音盤をめぐり緊迫した事件に焦点を当てた「日本のいちばん長い日」が8日から上映され、テレビ各局もさまざまな番組構成で視聴者に戦争の悲惨さなどを訴える▼先日、NHK大河ドラマ「山河燃ゆ」がDVD発売されることを知った。原作は山崎豊子さんの『二つの祖国』。昭和59年の放送時見たが、その後日系人収容所に関する内容が問題視され、長らくお蔵入りになっていた▼戦前、日本から米国に渡りクリーニング店を営む家族が太平洋戦争を境に日米どちらに忠誠を誓うか迫られる。物語の佳境は、フィリピンの戦場で遭遇する米軍側の兄と日本兵の弟。互いに銃口を向けあう息詰まる場面。全編通じて骨太の作品である。
片隅抄