東日本大震災の大津波を受けて海岸沿いにあった自宅が壊れた同僚が言う。「沿岸部に高い堤防が建てられて海が見えなくなったって言うけどさ。見えないだけじゃないの。波の音も聴こえなくなった」▼希望ある未来を感じさせる〝復興〟という名のもとに行われている工事だが、現実は内視鏡を使う前の、患者の体を切り刻んだメスを振るっての手術のようなものだ▼だからいずれは回復して〝退院〟の時期がくるのだろうが、それでも病に侵され、術後に味わったつらい時期は、〝手術痕〟とともに心に残る。もっとも、これ以外の手術(工事)の手法はないのだろうか…▼あす28日、小名浜港の潮目交流館で「いわき里山交流フェスタ」が開かれる。4・11の大規模な土砂崩れや放射能汚染に苦しみ、深刻な過疎化・高齢化に苦しんでいるが、今回は中山間部で地域おこしに携わる人たちが海辺に下りて元気な姿を見せる。同じいわき市民。希望のゴールはひとつだ。
片隅抄