東日本大震災からきょうで丸5年。何度も当欄で書いてきたが、今でも発生当時の状況をありありと思い出すことができる。いや忘れることができないのだ▼ライフラインの寸断による日常生活の困窮、東電福島第一原発事故で拡散した放射性物質の見えざる恐怖に対する日々。さらに被災地に寄せられた多くの善意に感謝しながらも、本県産農産物に向けられるいわれなき風評など、さまざまな体験を経ての5年だった▼おりしも本日、公立中学校の卒業式が行われた。5年前の震災当日も式があったことを記憶する。当時、まだ小学生だった生徒たちも無事巣立っていった。子どもながらつらい体験をしたと思う▼今振り返ると「大震災などあろうはずもない」とたかをくくっていた大人たち。その結果、想定外などと生やさしいものではない過酷な現実がわれわれを打ちのめした。若い彼らに「負の遺産」を担わせる愚かさをじっくり考えなくてはならない。
片隅抄