中央公論社でかつて編集者を務めた直木賞作家村松友視さん。会社勤めのかたわら、ファンの立場で独特のプロレス論を展開した著書がヒット。文中で使われた「過激」なる言葉がよく知られるようになった▼予定調和と思われがちなプロレスだが、ある一線を越えた格闘技術で相手を倒すアントニオ猪木を称して「過激」と呼んだ。さらにもう一つ、時代背景にもこだわる。特に村松さんが自著で回想する昭和47年当時は騒然としていた▼極左集団が引き起こした「あさま山荘事件」を例にこの時代を過激と位置づける。編集者時代を振り返った作品『夢の始末書』には担当作家はじめ各分野の一線級が登場する。中でもアングラ劇団の唐十郎氏との交流がつづられている▼時代の寵児でもあった天井桟敷、状況劇場などの活躍。その作品ポスター展がアリオス小劇場で始まった。館内をほの暗いライトが包み、当代の画家が手掛けた作品が並ぶ。一見の価値がある。
片隅抄