過日の小欄で、日本語の表現について記したが、その後、読者から言葉に関して感じていることがつづられたお便りをいただいた。内容の一つは「全然+肯定形の言い方が気になる」というもの▼これには、当方も似た思いがあり、日ごろ耳にする「全然よい」といったような表現は、「近年広まった俗用」と認識していた。が、この機にと思い、あらためて調べてみて、全然+肯定形のすべてが俗用・誤用とは言えないことを学んだ▼というのも、もともと「全然」は「すべて」「すっかり」に相当する意味を持ち、否定形・肯定形のどちらにも使われる言葉だったとのこと。明治・大正時代の書物等には肯定形の表現も見られ、ある研究によると「否定形での使われ方が広がったのは、その後の時代では」と考えられている▼現在の俗用も含め、これでまた、言葉が人間の営みとともにあることを痛感した。日本語の深さに「全然瞠目させられた」といったところだろうか。