大相撲初場所が始まったが、注目力士に初土俵から新関脇まで77場所かけてスロー昇進した苦労人の玉鷲がいる。難しい地位ながら6日目まで4勝2敗と大健闘だ。現在32歳。いつ引退してもおかしくない年齢だが、実はこの玉鷲と同じ昭和59年11月生まれの力士に東二段目79枚目の東浪(本名・佐藤俊実)がいる▼本県出身者が多い玉ノ井部屋所属。生まれは浪江町だが、好間高で柔道に励んだあと好間工業団地で働いた。角界の門をたたいたのは年齢制限ぎりぎりの22歳だった。同部屋が当時珍しいWEBサイトで情報を発信していたのを見たのが入門のきっかけだという。最高位は大震災があった23年の11月場所で西三段目55枚目▼平字白銀町の飲食店で意気投合したことから親交を深めている。原発事故で家族はばらばらになったが、古里の人たちの期待に応えようと土俵に上がっている。初めて会ったとき「浪江もいわきも大好きっす」と笑ったのが印象に残った。
片隅抄